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- 若年性特発性関節炎 カナキヌマブ治療の理論と実際
内容紹介
若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis : JIA)は,16歳未満に発症し,少なくとも6週間以上持続する,原因不明の慢性関節炎である。小児リウマチ性疾患のなかで最も多くみられる疾患だが,関節炎が進行すると不可逆的な関節破壊をきたすことになるため,早期の炎症鎮静化が必要となる。
JIAの診断・治療・管理において,2007年に『若年性特発性関節炎初期診療の手引き』が公表され,続いて『若年性特発性関節炎初期診療の手引き2015』が発刊されたことにより,一般小児科医あるいは内科医,整形外科医に対してより具体的なJIAの初期診療の内容が示され,全国的に標準的な診療が施されることになった。
一方,初期治療を受けたなかでも治療反応性に乏しい例,薬剤の副作用などにより十分な薬効が得られない例に対しては,次の段階の治療が必要となる。生物学的製剤による治療がそれに該当する。これまで全身型JIA(systemic JIA : sJIA)に対しては,2008年にトシリズマブ(商品名:アクテムラ® 点滴静注用)が登場して以来10年が経過して,漸く欧米で標準的に使用されているカナキヌマブ(CAN,商品名:イラリス®)が本邦でも承認となった。
CANは,炎症性サイトカインの1つであるインターロイキン(IL)-1βに対する遺伝子組換えヒトIgG1モノクローナル抗体製剤であり,IL-1βに結合し,その活性を中和することで炎症を抑制する。CAN皮下注射剤は2020年3月時点で世界約70ヵ国で承認されており,本邦においても2011年にクリオピリン関連周期性症候群,2016年には高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症),TNF受容体関連周期性症候群および既存治療で効果不十分な家族性地中海熱の治療薬として承認され,そしてついに2018年7月に既存治療で効果不十分なsJIAに対する適応を取得するに至った。
臨床の場でCANが使用できるようになり,どのような症例に使ったほうがよいか,どのタイミングで導入すべきなのか,どのような点に気を付けて使っていくべきか,マクロファージ活性化症候群のときに使用できるのかなど,さまざまなご質問をいただく機会が多くなってきた。
そこで,この度CANに対するさまざまなご質問に答えるべく,本書『若年性特発性関節炎 カナキヌマブ治療の理論と実際』を発刊することとなった。実際にこれまでCANを使用してきた小児リウマチ医の先生方に,ご自身の経験した症例を提示していただき,その使い方・注意点を具体的かつコンパクトに纏めた症例集である。ご使用を躊躇され,あと一歩が踏み出せずにいる読者の皆さんに勇気を与えられる一冊になっていると私は信じている。
最後に,ご多忙のなかご執筆をお引き受けいただいた先生方に深謝申し上げたい。
(森 雅亮/「序文」より抜粋)
目次
第1章 総論
1.全身型若年性特発性関節炎(sJIA)/野澤 智
2.マクロファージ活性化症候群(MAS)/清水正樹
3.カナキヌマブ(CAN)/岩田 直美
第2章 症例報告
1.経過良好
2.経過不良
3.マクロファージ活性化症候群(MAS)
4.感染症
5.予定手術