内容紹介
呼吸器病学は,がん,感染症,COPD,喘息,間質性肺疾患,睡眠呼吸障害など疾患が多岐にわたり,しばしばこれらが合併したり,他科疾患との関連もみられたりと,多彩で複雑な領域です。さらに,日本人の死亡原因をみても,肺癌,肺炎, COPD と上位を占めており,高齢化が進むわが国において,ますます患者数の増加が見込まれ,重要性が高まっていくと考えられます。一方,呼吸器内科・外科ともに,専門医数が不足しており,高まる医療需要に十分応えられるに至ってはおらず,学生や若手医師への教育,専門医育成の必要性が求められています。
京都大学呼吸器科分野では,1941年(昭和16年)「京都大学結核研究所」として発足して以来,長年にわたり,内科と外科が互いに連携して診療,研究,教育に従事してきました。教育・啓発活動の一つとして,呼吸器病学の教科書が作成されてきましたが,最近では,2004年に当時の三嶋理晃教授,和田洋巳教授の監修の下,「呼吸器病学 総合講座」として出版され,多くの学生や医学を学ばれる方々に広く親しま れてきました。しかし,その後の呼吸器病学の進歩はめざましく,日々の診療に要する知識量が格段に増え,診断,治療ともに内容も複雑多岐にわたるようになりました。 そこで,このような状況に対応した新しい教科書として,「最新 呼吸器内科・外科学」 と書名も新たにし,呼吸器のおもしろさ,不思議さを楽しく学んでいただけるように, より見やすく,わかりやすい誌面で編集することとしました。
本書は,日々専門医として診療に従事してきた,京都大学医学部附属病院と関連病院の医師らが総力をあげて執筆したものです。呼吸器病学の総論から各疾患の診断・ 治療まで全般を網羅しており,医学生や研修医の教科書としてだけでなく,これから専門医を取得されたい方にも準拠した形式を備えて編纂されており,呼吸器診療に従事されている方々も含め,幅広くご活用いただければ幸いです。また,昨今,目まぐるしく治療ガイドラインが改訂される肺癌のように,呼吸器病学の日々の進展に対応できるよう,デジタルファイル版では最新の更新内容を参照できるように準備もしています。
本書が,多くの方々に呼吸器に興味をもってもらえる書になり,呼吸器病学,呼吸器診療の発展にお役にたてばと心より願っています。最後に,前回の教科書に続き, 本書の出版に尽力いただいたメディカルレビュー社編集室の皆様に感謝を申し上げます。
(伊達 洋至/平井 豊博「序文」より)
目次
総論
I.呼吸器の疫学
A 呼吸器疾患の疫学
Ⅱ.呼吸器系の解剖と機能
A 呼吸器系の解剖
B 呼吸器の発生
C 呼吸器の防御機構
D 肺の代謝
E 肺の加齢
F 呼吸生理と機能検査
Ⅲ.主要症候と身体所見
A 病歴の取り方
B 主要症状からの鑑別診断
C 身体所見
Ⅳ.胸部画像診断
A 胸部X線写真とCT,MRI
B 胸部疾患の画像診断の進め方
C 血管造影法
D 核医学診断
Ⅴ.検査・介入手技
A 血液検査など
B 喀痰検査
C 気管支鏡
D 胸腔穿刺とドレナージ
E 生検法
F 胸腔鏡
G 胸部超音波検査
H 心電図
I 肺音分析法
Ⅵ.呼吸器疾患の治療
A 呼吸管理
B 薬物療法
C 輸液(水電解質・高カロリー輸液)
D 中心静脈圧測定
E 外科療法
F 放射線治療
G 呼吸リハビリテーション
-患者教育・運動・栄養管理
H 禁煙指導
I その他の治療法
J 在宅医療
K ホスピス・緩和ケア
各 論
Ⅰ.主な疾患
A 感染症および炎症性疾患
B 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
C 気管支・細気管支の疾患
D アレルギー性疾患
E 間質性肺疾患
F 全身性疾患に伴う肺疾患
G 薬剤,化学物質,放射線による肺障害
H 職業性,環境性呼吸器疾患
I その他の肺疾患(比較的まれな疾患)
J 原発性肺癌
K その他の原発性肺悪性新生物
L 転移性肺腫瘍
M 肺良性腫瘍
N 肺および気管支の先天異常
O 肺水腫および急性呼吸促迫症候群
P 肺血栓塞栓症
Q 呼吸不全
R 呼吸調節障害
S 胸膜の疾患
Ⅱ.胸膜,縦隔,横隔膜,胸郭の疾患
A 縦隔の疾患
B 横隔膜,胸郭の疾患
C 穿通性外傷,非穿通性外傷
Ⅲ.胸部外傷および胸部救急
A 気管損傷
B 気道熱傷,気道異物,誤嚥