内容紹介
本書の最大の特徴は、まず、身体所見の記載法を明示していること、そしてこれだけ押さえておけばとりあえずは大丈夫というポイントを読者に伝えているところにあります。観察結果を伝え、記録に残すには、自分が確認した初見をどのように表現したらよいのか知らなくてはなりません。逆に、何を記載しなくてはいけないかわかっていれば、どの所見を確認すべきかが明らかになります。初見の記載を自信をもって行うために、アセスメント力の向上が図られるという仕掛けです。
最初に、アセスメントを行う際は、系統立てて所見をとり診療録に記載します。その後の経過の記録では、多くの場合、正常初見は簡略化して記載されます。注目している病態によっても、記載内容は異なります。本書では、臨床の第一線で診療にあたっている医師に、領域毎に入院時の詳しい記載と、簡略化した日々の経過記録で用いる記載法を示していただきました。患者の状態を素早く判断するために必要な身体所見を概説し、病歴や症状から確認すべき項目をリストアップすることで、即実践に役立つものとなっています。フィジカルアセスメントは複雑で難しいという印象をもっている読者にこそ、手にとってもらいたい教科書です。手順に従って繰り返していけば必要な情報が手間なく得られると感じていただけることでしょう。
本書の章立ては、看護師特定行為研修の共通科目におけるフィジカルアセスメントの項目に準拠しています。そのため、部位別身体診察手技と所見の理論に続いて、第3章では小児および高齢者の生理学的な特徴に基づくフィジカルアセスメントと身体所見の記載法を取り上げました。第4章では、救急外来および集中治療室ならびに在宅医療の現場において、身体所見が早期の診断や経過観察に役立った事例を紹介いただいています。病態と関連付けて解剖や生理学の知識が学べるのも本書の魅力です。特定行為を行う看護師にとどまらず、医学生や初期研修医を含め、身体所見確認が求められるあらゆる職種に役立つテキストになっています。フィジカルアセスメントの手順をコンパクトに学ぶことができ、それほど時間をかけずに全身の確認が行えることを実感してください。
多様な臨床場面において、病態の変化や異常の出現を見逃さず、しっかりと記録していち早く対応につなげられるフィジカルアセスメントの修得に本書を役立てていただけたら幸いです。
(武田裕子「はじめに」より一部抜粋)
目次
第1章 フィジカルアセスメントを自在に
第2章 部位別身体診察手技と所見
第3章 身体診察の年齢による変化
第4章 状況に応じた身体診察