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- 糖尿病療養指導ガイドブック 2018
内容紹介
糖尿病が人類に及ぼす甚大な被害は増大の一途をたどっており、わが国においても患者数の抑制、血管合併症の発症・重症化の阻止、そして健常人と同等の健康寿命と生命予後の延伸など実現すべき目標は達成のめどが立っていない。特に、高い就労期患者の未受診率と治療中断率、高齢糖尿病患者の増加で顕性化する悪性新生物による高い死亡率、認知症やフレイルなど新しい合併症の出現、そして治療による重症低血糖など克服すべき課題が次々と立ちはだかっている。
その現状に対し、関連学会等から次々に発信されるガイドラインや治療指針への対応、多様化する患者のニーズと社会背景に即した個別化治療、多彩な糖尿病治療薬の適正使用、そして保健・介護を含めた地域で展開する多職種連携包括的医療の確立が求められている。このように患者数の増加といった量的課題と治療の複雑性が増し適正性を求められる質的課題に対して、限られた医療資源を地域に展開して、質の高い均てん的医療を行うためには、専門性の高い糖尿病医療チームを中心とした地域での医療連携体制を構築することが不可欠である。
日本糖尿病療養指導士は、医師よりも患者に近い存在として、患者個別の療養上の問題の抽出から、患者自身が行い得る実践的な指導・支援を行うとともに、専門性の高いチーム医療を円滑に進めるための中心的役割を担う。また、近年では多くの地域で展開する地域型糖尿病療養指導士の指導や連携を推進する立場にもある。このため、日本糖尿病療養指導士は糖尿病患者の病態、合併症、社会的背景の適切な評価に基づき、実現可能な食事療法と運動療法の具体的な指導、そして選択された治療薬への正しい知識と服薬・手技の指導、血糖自己測定の手技指導から結果の評価ができる能力から、さまざまな職種の役割を大局的に理解し、チームを構成し牽引するスキルとして求められている。
本ガイドブックは、日本糖尿病療養指導士の学習目標と課題を網羅したものであり、膨大かつ日進月歩の糖尿病診療に関する情報を可能な限り簡潔化し、多職種の療養指導士にとって基礎知識から個別症例への対応を含めた実践的指導まで記載することをめざしている。認定試験や講習資料のほとんどは本書に基づき作成されており、情報の精度と他ガイドブックとの整合性にも配慮した。特に2018年版では、厚生労働省、日本医師会、日本糖尿病対策推進会議がすすめる糖尿病性腎症重症化予防プログラムを概説し、持続血糖モニタリングなどから得られる膨大なブドウ糖濃度データを理解するためのデータマネジメントシステムの解説とその活用方法について記し、また糖尿病患者の心理と行動をさまざまな職種の方にも理解できるよう大きく改訂した。さらに、2018年4月の糖尿病に関連する診療報酬の改訂についても付録に反映させ、臨床の場で役立つよう配慮した。また、2015年に始まった「症例ファイル」も、個々の症例から臨床的課題を抽出し、治療目標を明確化し、療養指導内容の方針決定から関連する職種間での連携まで含めた紙上ケースカンファレンスを実現している。これにより、これから日本糖尿病病療養指導士をめざす者も、またすでに日本糖尿病病療養指導士を取得している者にも、本書が知識の修得と整理に、そして実践的研修として役立つことを期待したい。
(松久 宗英「序」より一部抜粋)
目次
Ⅰ章 糖尿病療養指導士の役割・機能
1.日本糖尿病療養指導士制度
2.療養指導の基本
3.関連団体
Ⅱ章 糖尿病の概念、診断、成因、検査
1.糖代謝の概略(健常人)
2.疾患概念
3.診断
4.分類と成因
5.検査
Ⅲ章 糖尿病の現状と課題
1.糖尿病の疫学指標
2.糖尿病の一次予防
3.糖尿病を減らすための社会的取り組み
Ⅳ章 糖尿病の治療(総論)
1.治療目標とコントロール目標
2.治療方針の立て方
Ⅴ章 糖尿病の基本治療と療養指導
1.食事療法
2.運動療法
3.薬物療法(経口血糖降下薬)
4.薬物療法(注射血糖降下薬)
5.インスリンポンプ療法
Ⅵ章 糖尿病患者の心理と行動
1.糖尿病患者の心理
2.糖尿病患者のセルフケア行動
3.心理・行動に配慮した支援
Ⅶ章 療養指導の基本(患者教育)
1.療養指導に必要な患者教育の考え方
2.療養指導の実際
3.評価・修正
Ⅷ章 ライフステージ別の療養指導
1.乳幼児期
2.学童期
3.思春期
4.妊娠・出産
5.就労期
6.高齢期
Ⅸ章 合併症・併存疾患の治療・療養指導
1.急性合併症
2.糖尿病細小血管症
3.大血管症(動脈硬化症)
4.メタボリックシンドローム
5.その他
Ⅹ章 特殊な状況・病態時の療養指導
1.シックデイ
2.周術期
3.栄養不良
4.旅行
5.災害時
6.医療安全上の留意点
症例ファイル