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定価 3,850円(本体3,500円+税) 版 型 B5判 頁 数 204頁 ISBN 978-4-7792-2034-0 発売日 2018年2月23日 編集 日本泌尿器科学会
内容紹介
この度,『前立腺がん検診ガイドライン』が改訂されることになりました。2008年に初版を,2010年に増補版を刊行しており,この間,本ガイドラインは泌尿器科医のみならず前立腺がん検診に携わる幅広い層に活用され,その実用的内容は高く評価されてきたものと確信しております。
2016年には本邦における前立腺癌罹患数は,男性癌の中で第一位と推定されるにもかかわらず,死亡者数は2014年に減少に転じる等,近年前立腺癌の疫学的状況に変化を認めます。また,2010年に増補版が発刊される契機となりました欧米における前立腺がん検診の有効性を検証した大規模無作為化比較対照試験の結果に関しましても,その後の長期経過観察に基づく所見も追加報告されるに至っており,前立腺がん検診を取り巻く環境にも一定の変化が生じつつあるものと推察されます。このような時期に本ガイドラインの改訂が行われたことは,誠に時宜を得たものであると考えます。
また本改訂版も,単に検診に関連した前立腺癌の診断に止まることなく,診療システム全体を評価するという意図のもと,泌尿器科以外を専門とされる先生方にもご参画いただき,疫学,検診発見癌に対する治療,QOLへの影響,医療経済的側面等も網羅した充実した内容で構成されております。その結果,本改訂版では,前立腺がん検診を強く推奨する立場をより鮮明にする一方で,検診受診に伴う利益と不利益も十分に解説されており,非常に客観的かつ信頼性の高い情報提供がなされております。従いまして,本ガイドラインが引き続き前立腺がん検診に関する情報発信およびその意義の啓発に大いに貢献するものと考えております。
最後になりますが,鈴木和浩教授をはじめとする本ガイドラインの改訂作業にご尽力いただいた諸先生方に深甚なる謝意を表するとともに,本ガイドラインが我が国における前立腺がん検診の適切な運用に役立つことを祈念し,私の序の言葉とさせていただきます。
(藤澤 正人/「序」より抜粋)
目次
前立腺がん検診ガイドライン改訂の手順
◆総論
前立腺がん検診の推奨・アルゴリズム
◆1 疫学
CQ1 本邦の前立腺癌罹患数は増加しているのか?
CQ2 本邦の前立腺癌死亡数は増加しているのか?
CQ3 本邦の前立腺癌罹患率・死亡率は欧米と比べ低いのか?
◆2 前立腺がん検診受診者への対応:リスク因子・化学予防
CQ4 検診において家族歴聴取は必要か?
CQ5 家族歴を有する検診受診者への対応は変えるべきか?
CQ6 男性型脱毛症治療薬(5α還元酵素阻害薬)内服者への対応は必要か?
CQ7 前立腺肥大症治療薬内服者への対応は必要か?
◆3 検診発見癌と臨床診断(有症状発見)癌の比較
CQ8 本邦で検診・健診を契機として発見される前立腺癌の比率は上昇しているのか?
CQ9 検診発見癌と臨床診断(有症状発見)癌の進行度に違いはあるのか?
CQ10 検診発見癌と臨床診断(有症状発見)癌の生存率に違いはあるのか?
◆4 前立腺がん検診の有効性評価
CQ11 前立腺がん検診の有効性評価方法は無作為化比較対照試験(RCT)がベストか?
CQ12 検診実施による転移癌罹患率低下効果は証明されているのか?
CQ13 検診実施による前立腺癌死亡率低下効果は証明されているのか?
CQ14 検診実施による全死亡率低下効果はあるのか?
◆5 前立腺がん検診の対象・検査法・検診間隔
CQ15 検診受診者の適切な受診開始年齢は?
CQ16 検診受診中止判断に暦年齢・健康状態を考慮すべきか?
CQ17 検診における適切なPSAカットオフ値は?
CQ18 直腸診の検診・診断における単独検査・PSA検査の補完検査としての意義は?
CQ19 PSA基礎値によるリスク細分化オーダーメイド検診は有用か?
◆6 住民検診・人間ドック検診システムと精度管理
CQ20 住民検診で推奨される前立腺がん検診システム・精度管理は?
CQ21 人間ドックで推奨される前立腺がん検診システム・精度管理は?
◆7 精密検査
CQ22 初回の精密検査として推奨される検査法は?
CQ23 初回前立腺生検の適応はどのように判断すべきか?
CQ24 MRI標的生検は有用か?
CQ25 前立腺生検陰性後に推奨されるフォローアップ法は?
CQ26 再生検の適応と推奨される方法は?
CQ27 前立腺生検の合併症とその対策は?
◆8 検診発見癌に対する各種治療の適応と合併症
CQ28 前立腺癌診断後の監視療法のアウトカムは即時根治療法と比較し,転移癌進展リスク・死亡リスクは上がるのか?
CQ29 症状が出現するまで治療を行わない待機療法は即時根治療法と比較し,転移癌進展リスク・死亡リスクは上がるのか?
CQ30 監視療法・待機療法実施によるQOL障害にはどのようなものがあるのか?
CQ31 手術療法・放射線療法実施により過剰治療になる可能性が高い症例の特徴は?
CQ32 手術療法実施による合併症・OQL障害にはどのようなものがあるのか?
CQ33 放射線療法実施によるQOL障害・合併症にはどのようなものがあるのか?
CQ34 ホルモン療法実施により過剰治療になる可能性が高い症例の特徴は?
CQ35 ホルモン療法実施によるQOL障害・合併症にはどのようなものがあるのか?
◆9 検診の利益・不利益とQOLへの影響
CQ36 検診を受診(実施)することの利益・不利益と改善策は?
CQ37 検診を受診(実施)しないことの利益・不利益と改善策は?
CQ38 検診受診(実施)による心理的負担・QOL障害の可能性と対策は?
CQ39 検診未受診(未実施)による心理的負担・QOL障害の可能性と対策は?
CQ40 検診受診(実施)により質調整生存年(QALY)延長効果は期待できるのか?
◆10 検診効率・経済的評価
CQ41 前立腺がん検診の検診効率はほかのがん検診と比較し妥当なレベルか?
CQ42 検診導入を契機に発見される前立腺癌の診断・治療効率は妥当なレベルか?
CQ43 前立腺がん検診の増分費用対効果費(ICER)はどの程度か?
◆参考資料1 国内外の前立腺がん検診ガイドライン
1 米国泌尿器科学会の推奨度・評価
2 欧州泌尿器科学会の推奨度・評価
3 その他の国内外専門機関における推奨度・評価
◆参考資料2 前立腺がん検診受診前後のファクトシート
1 前立腺がん検診受診前のファクトシート
2 前立腺がん検診受診後のファクトシート