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定価 2,200円(本体2,000円+税) 版 型 A5判 頁 数 218頁 ISBN 978-4-7792-2010-4 発売日 2018年2月1日 監修 サラシア属植物普及協会
内容紹介
日本や中国の和漢生薬をはじめ,インドのアーユル・ヴェーダ生薬や中近東のユナニー生薬など世界各地にさまざまな生薬が知られています。これらの生薬は動植物,鉱物の中から永年のヒトへの使用経験を経て有効なものが取捨選択され今日に伝えられたもので,天然薬物や伝統医薬品などとも呼ばれます。生薬は医療に用いられるだけでなく,食品や香粧品,農薬などとしても幅広く利用されています。また,生薬の成分が新しい医薬品または医薬リード化合物として創薬に寄与しております。このように生薬は人類にとって貴重な資産であり“大地からの贈り物”と言えます。
デチンムル科のサラシア属植物は熱帯雨林地域に分布し,アーユル・ヴェーダ医学ではピッタ,カパという2つのドーシャの働きを抑制して糖尿病に有効であると伝承されてきました。インドやスリランカで調査すると,現地では本植物の太い根や茎をくり抜いて作ったコップに水を入れて毎日飲むことで,糖尿病予防や初期治療が行われていました。そこで,予防効果に着目して糖吸収抑制活性を指標に探索したところ,強力なα-グルコシダーゼ阻害作用を示すチオ糖スルホニウム類を見出しました。ポリフェノールやテルぺノイド成分などにも興味深い生体機能が認められ,これらの成分が混在するエキスが最も効果的であることが明らかになりました。サラシア属植物普及協会の研究者によって主要成分の定量法の開発や安全性が確認されるとともに,臨床試験の結果などから糖尿病予防に有用な機能性食品“サラシア”が誕生しました。スルホニウム成分や類緑化合物の合成およびin silico計算化学の適用などによって活性発現の必須構造が判明し,市販医薬品よりも強力な活性を示す誘導体が創製されるとともに,栽培化研究も進んでおります。今日,“サラシア”は特定保健用食品や機能性表示食品として認知され,海外への展開などますますの発展が期待されています。
本書は,“サラシア”に関する高度な専門性と最新の学術的内容を包含しておりますので,機能性食品に興味をもたれる産学の研究者や医療関係者の方々に,“サラシア”をご理解して頂くための良き道しるべとなれば幸いです。
(吉川雅之「序文」より抜粋)
目次
○第1章 サラシアの資源保護
1 サラシア属植物の栽培研究
○第2章 サラシアについて
1 サラシア属植物の名称(学名)と分布および伝承薬効
2 種の分類
○第3章 サラシアの有効成分
1 サラシア属植物抽出物(粉末)の製法に関して
2-1 有効成分:チオ糖類
2-2 ポリフェノールおよびテルペノイド成分
3 有効性(臨床研究データを中心に)
4 品質管理
5 安全性
○第4章 研究事例
1 血糖値の上昇抑制
2 サラシア属植物による関節リウマチ改善効果
3 腸内環境への影響および免疫系への効果
4 サラシアより新たに発見された血管病の特効薬成分
5 合成研究
6 Salacinolをシードとする新規α-グルコシダーゼ阻害化合物のin silicoドラッグデザイン研究
7 抗肥満,その他