内容紹介
爪白癬は日本人の1 割ほどが罹患しているとされ,非常に頻度が高い.もちろん皮膚科を訪れる患者にも爪白癬は多く,毎日の診療の中で必ず診る疾患である.テルビナフィン(1997 年)やイトラコナゾール(パルス療法の承認2004 年)が登場したころ,爪白癬領域は大いに盛り上がりを見せていた.「爪白癬は経口抗真菌薬で治療して完治を目指しましょう」というキャンペーンが行われ,新聞やテレビにも「爪白癬は病院へ」という広告が出されていたのを記憶されている方も多いだろう.しかしその後(しばしば経験することであるが,薬剤の発売後時間が経過し),このような動きが下火になるとともに,爪白癬への関心は薄れていった…と私は感じている.そして,あまり進歩がないまま時間が経ってしまった気がする.視診のみによる診断や,漫然とした外用治療,爪白癬ではない爪疾患への抗真菌薬の投薬など,爪白癬を取り巻く問題点は多い.
さて,2014 年にエフィナコナゾール外用薬が爪白癬の治療薬として発売された.そして2016 年,序文を書いているちょうど本日,高濃度のルリコナゾール外用薬が爪白癬治療薬として承認された.本書が出版される頃には診療現場で使用されていることであろう.さらに,ラブコナゾールプロドラッグが新規経口抗真菌薬として現在臨床試験中である.このようにここ数年で新しい爪白癬治療薬が続いて登場し,爪白癬の領域が再び脚光を浴びつつあり,さらなる活性化が期待できる.これはチャンスである.爪白癬の診断と治療について再度確認し,認識を高める好機である.
本書はそのためのテキストとして発刊される.爪や爪白癬についての基礎知識,爪白癬の正しい診断方法,治療方針の立て方,内服治療と外用治療について,この領域の専門家の先生方が執筆してくださった.爪白癬診療に必要なことのすべてがここに網羅されている.皮膚真菌症や白癬についての書籍はあるが,1 冊の紙面全部を使用して爪白癬について書かれた書籍はおそらくはじめてではないだろうか.どんなに有効な薬剤が登場しても,正しい診断や治療薬の適切な選択がなされなければ,治癒という最終目標には達することができない.
本書の内容を通じて爪白癬に対する意識を高め,診療の技量を向上させて頂ければ幸いである.本書が医療現場で広く活用され,世の中の爪白癬がもっと治る時代になることを強く願っている.
(常深祐一郎「序文」より抜粋)
目次
Chapter 1 爪白癬治療を始めるために必要な基礎知識
Chapter 2 爪白癬の診断
Chapter 3 爪白癬治療の方針
Chapter 4 爪白癬の内服治療
Chapter 5 爪白癬の外用治療
Chapter 6 Q&A