内容紹介
2011年,抗凝固療法のプレーヤーとして,伝統的なワルファリンに,イノベーションとしての非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(NOAC)が加わった。以降,毎年新しいNOACが1つずつ参加し,2014年にはワルファリンと4つのNOACが経口抗凝固薬の世界を形作ることとなった。ここ数年の変化はおそらく医療の歴史にも残る大きな一歩であったと感じる。そして同時に,それまで比較的地味と考えられてきた抗凝固療法に関する医学知識が一躍脚光を浴び,多くの新しい医学情報が積み重ねられると同時に,一般医家への啓発も広がった。新しい薬物が,新しい学問を作り出した数年ともいえる。
本書は,このような激変の時代に,この抗凝固療法に関するすべて,つまり抗凝固療法の基礎,薬理,病態,臨床試験,診療現場での活用を網羅し,同時にこれらのエッセンスを絞ることにより,誰もが使いやすいポケットブックを目指したものである。それぞれの分野の第一人者に執筆をお願いし,ポケットブックとしては豪勢な布陣,総勢30名弱の専門家で構成されている。編者としてすべてのNOACが出そろった今の時代に相応しい,そして豊富な内容であると自負するとともに,ここで執筆者の方々に改めて敬意を表したい。
現実の医療で抗凝固療法を行わなければならない機会が増加している。同時に,実施する際の不安や困惑も増加するのは必定である。そのようなとき,本書が,実地医家をサポートする役目を担えることを切に願っている。
山下武志(「序文」より)
目次
Chapter 1 血栓形成のメカニズムと抗凝固薬
1 血栓形成における血液凝固因子の役割
2 血栓形成における血小板の役割
3 血栓形成における線溶系の役割
4 ワルファリンの薬理作用
5 トロンビン阻害薬の薬理作用
6 Xa因子阻害薬の薬理作用
Chapter 2 抗凝固療法を必要とする病態
【心房細動(AF)】
1 心房細動の分類
2 心房細動による脳卒中の疫学
3 心房細動の治療のあり方
4 心房細動による脳卒中のリスク層別化
5 抗凝固療法における出血リスク層別化
6 一次予防と二次予防の違い
7 特殊患者
①発作性と慢性AF
②腎機能障害患者
③高齢者
④PCI施行患者
⑤アブレーション,DC施行患者の抗凝固療法
⑥人工弁装着患者
8相互作用のある薬物
【静脈血栓塞栓症(VTE)】
1 一次予防(病態と治療)
①下肢整形外科領域
②腹部外科領域
2 急性期治療(病態と治療)
3 二次予防(病態と治療)
Chapter 3 抗血小板薬・抗凝固薬のエビデンス
【心房細動(AF)】
1 ワルファリン
2 ダビガトラン
3 リバーロキサバン
4 アピキサバン
5 エドキサバン
6 抗血小板薬
【静脈血栓塞栓症(VTE)】
1 経口抗凝固薬の臨床試験
Chapter 4 ガイドライン
1 日本のガイドライン~心房細動治療(薬物)ガイドライン改訂版を中心に~
2 海外のガイドライン,日本との違い
3 静脈血栓塞栓症(VTE)のガイドライン
Chapter 5 Question & Answer
1 ワルファリンの導入,維持量の決定はどのように行うのですか
2 非ビタミンK阻害経口抗凝固薬開始時の注意点や容量設定について教えてください
3 ワルファリンからのNOAC,NOACからワルファリン,またはNOACから他のNOACへ変更する際の注意点について教えてください
4 抗凝固薬服用中の患者に抜歯,白内障手術,内視鏡手術,外科手術など侵襲的な治療が必要になった際,どのように対応すればよいでしょうか
5 抗凝固薬服用中の患者に大出血や頭蓋内出血が生じた場合,どのように対処すればよいでしょうか
6 抗凝固療法中に大出血や脳梗塞を起こした場合の血栓溶解療法(rt-PA)の適応について教えてください
7 脳梗塞急性期の抗凝固療法の開始について教えてください
8 大出血や頭蓋内出血後,抗凝固療法をどのように再開すればよいのか教えてください