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定価 3,300円(本体3,000円+税) 版 型 B6判変型 頁 数 172頁 ISBN 978-4-7792-1376-2 発売日 2014年11月21日 編集 山下武志
内容紹介
医学・医療の長い歴史のなかで,これほど抗凝固療法に注目が集まった時代はないだろう。しかも,その対象は医師ならば誰もが出会う心房細動患者である。社会の高齢化は,高齢者に対する抗凝固療法という難しい医療を,医師により積極的に行わせようとしているかのようにみえる。そして,それをより容易くさせるために新しい複数の抗凝固薬を用意し,同時に数多くのエビデンスや疫学情報を集積させたかのようでもある。
しかし,多くの情報を前に複数の薬物の特徴や使い方を知り,目の前の特徴のある患者1人に対して1つの抗凝固薬を選択,処方し,それを安全に継続することは,「言うは易し,行うは難し」である。抗凝固療法に関する教科書は数多くあるが,そこに書かれた正しい医学的事実を現場で実践しようとすると,はたしてこれで大丈夫なのだろうか,という不安が頭をもたげてくる。
本書は,そのような現場での不安を払拭するための本である。現場には,明快な解答がなされていない数多くの疑問が存在している。どれほどエビデンスや疫学情報が集積されても,疑問は永遠に残り続ける。そして,いわゆる「達人」たちもその疑問をいつも感じながら,抗凝固療法を日夜実践しているのである。さまざまな特徴をもつ心房細動患者を前に,達人たちが何を考え,どのような抗凝固療法を行っているのか,興味をもって読んでいただければ幸いである。また同時に,明快にノウハウを紹介していただいた達人たちに,改めてここで感謝したい。
(山下武志「序文」より)
目次
第1章 各種ガイドラインにおける非弁膜症性心房細動の血栓塞栓症のリスク評価/井上 博
第2章 血栓塞栓症および出血性合併症のリスク評価のポイント/鈴木信也
第3章 心房細動における心原性脳塞栓症発症リスク
1.CHADS2スコアにおける高血圧症の基準とは何か? 降圧薬によりコントロールされた高血圧はリスクとなるか?/矢坂正弘
2.心房細動患者の高血圧の降圧基準と薬剤選択は?/矢坂正弘
3.心房細動患者が糖尿病を合併する際,糖尿病の重症度,血糖コントロールの状態,罹病期間は心原性脳塞栓症発症リスクにどのような影響をもたらすか?/加藤武史
4.CHADS2スコアにおけるうっ血性心不全の定義をどのように判断すべきか?/加藤武史
5.心房細動患者の糖尿病は,どのレベルにコントロールすべきか?/加藤武史
6.心房細動患者の年齢が65,75,85歳では,心原性脳塞栓症の発症に関してどの程度のリスクの相違が認められるか?/林 明聡/清水 渉
7.CHADS2スコア1点の心房細動患者:CHA2DS2-VAScスコア、HAS-BLEDスコアによる評価を加えたとき,治療はどのように異なるか?/林 明聡/清水 渉
8.CHADS2スコア2点をどのように考えるか? 脳卒中の既往,高血圧症を伴う心不全、糖尿病を伴う高血圧症では,心原性脳塞栓症の発症リスクにどの程度の差が認められるのか?/髙橋尚彦
9.CHADS2スコア1点をどのように考えるか? 心原性脳塞栓症の発症に対する各危険因子個別のリスクは同等か?/髙橋尚彦
10.大動脈プラークは,危険因子としてどのように捉えるべきか?/湯澤ひとみ/池田隆徳
11.CHA2DS2-VAScスコア:女性はリスクとなるか?/湯澤ひとみ/池田隆徳
第4章 各種抗凝固薬の特徴とエビデンス/奥村 謙
第5章 心房細動のリスクスコアに基づく抗凝固療法
1.CHADS2スコア1点の心房細動患者の抗凝固療法の実際
1.ワルファリンと新規凝固薬療法をどのように使い分けるか?/奥山裕司
2.危険因子となる病態(心不全・高血圧・糖尿病)による抗凝固療法の選択と注意点/奥山裕司
3.65歳の心房細動患者の抗凝固薬の選択と使い方/志賀 剛
4.75歳の心房細動患者の抗凝固薬の選択と使い方/志賀 剛
5.85歳以上の心房細動患者の抗凝固薬の選択と使い方/志賀 剛
6.貧血を伴う心房細動患者への抗凝固薬の選択と使い方/川村祐一郎
7.腎機能障害を伴う心房細動患者の抗凝固薬の選択と使い方/川村祐一郎
8.肝機能障害を伴う心房細動患者の抗凝固薬の選択と使い方/川村祐一郎
9.NSAIDを服用している心房細動患者の抗凝固薬の選択と使い方/川村祐一郎
2.(肥大型)心筋症を伴う心房細動患者における抗凝固療法の適応と薬剤選択・使い方/庭野慎一
3.甲状腺中毒を伴う心房細動患者における抗凝固療法の適応と薬剤選択・使い方/庭野慎一
4.高CHADS2スコア患者における抗凝固療法の選択と注意点/庭野慎一
5.低・中等度出血リスク(HAS-BLEDスコア0~2)の冠動脈疾患患者の抗凝固療法の適応と薬剤選択・使い方/大塚崇之
6.高度出血リスク(HAS-BLEDスコア3以上)の冠動脈疾患患者の抗凝固療法の適応と薬剤選択・使い方/大塚崇之
7.リスク因子のない65歳の心房細動患者における抗凝固療法の適応と薬剤選択・使い方/市川智英/渡邉英一
8.左心室機能不全(左室駆出率40%以下)の心房細動患者における抗凝固療法の適応と薬剤選択・使い方/市川智英/渡邉英一
9.透析療法を受ける心房細動患者における抗凝固療法の適応と薬剤選択・使い方/市川智英/渡邉英一
10.内頸動脈狭窄を伴う心房細動患者に対する抗凝固療法の選択と注意点/矢坂正弘