内容紹介
近年、わが国では、糖尿病患者数の増加に伴い、合併症である糖尿病足病変の予防や治療に関するニーズが高まっています。2008年の診療報酬改定で導入された糖尿病合併症管理料は、臨床現場においてフットケアと糖尿病の患者教育への関心が高まる起爆剤となりました。褥瘡を中心として発展してきた創傷ケアはますます専門化し、デブリードメントなど、糖尿病治療に関しても、特定の医療行為を実施することが可能な看護師の育成がはじまろうとしております。もちろん糖尿病足病変には治療よりも予防が最優先されます。それには、基礎疾患である糖尿病のコントロールが鍵を握り、セルフケアを含めて患者教育は看護師のきわめて重要な役割といえます。不幸にも、足の切断に至った場合には、その後のリハビリテーションが不可欠であり、長期にわたり糖尿病患者の療養生活を支援するシステムの充実も論を待たない状況です。
このような、糖尿病足病変の予防や早期治療、そしてリハビリテーションに関する支援には、近年、チーム医療が推進されるようになってきました。医師をはじめとする他職種との連携はもとより、さまざまな領域を専門とする看護師間の連携と領域横断的な知識や看護技術が期待されています。
編者が所属する東京大学では、2006年に附属病院の看護部、糖尿病・代謝内科とともに糖尿病足外来を開設しました。そこでは、皮膚科医、栄養士、義肢装具士などの多職種連携と、糖尿病看護認定看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師といった看護の専門職連携を核に診療にあたってきました。同じ看護職といえども、それぞれの異なる教育背景のもと、共通の知識と目標をもってケアを進めていくためには時間と労力が必要だったことは言うまでもありません。また、日々の診療や臨床研究、そして月1回の勉強会を通して、互いの領域をリスペクトできるためには、超えなければならない幾重もの壁があったことも事実です。
そこで本書では、直接日々のケアを担当する病棟ナースと、フットケアや糖尿病ケアを専門とするナースが共通認識をもってケアをできるよう、基本的な技術から専門的技術までをフローチャートを用いてわかりやすく解説しました。また、糖尿病足病変の予防から治療まで、とくに、従来の書籍には少なかった創傷管理や切断後のケアも含めて解説し、あらゆるステージの糖尿病患者を対象としたケアの理解を可能としました。さらに、日々進歩するフットケアに関する技術について、最新の研究や実践に基づく情報をコラムで紹介しました。
本書がナースの皆様の日々のケアに役立つこと、さらには糖尿病患者さんのウェルビーイングの向上に寄与できることを願ってやみません。
真田弘美
(「序文」より)
目次
Ⅰ フローチャート
Ⅱ 基礎知識を理解する
1 足を理解する
2 糖尿病を理解する
3 糖尿病の足を理解する
4 糖尿病足病変を理解する
5 心理・社会的ケアを理解する
6 教育を理解する
Ⅲ 足のアセスメントをする
1 リスクを見極める
2 足をみる
3 歩き方をみる
4 靴をみる
Ⅳ 足をケアする
1 看護師が行うケア
1)基本的なケア
2)非潰瘍性病変のケア
2 患者教育
Ⅴ 創傷のアセスメントをする
1 創傷を理解する
2 糖尿病の創部をみる
3 スケールを用いて評価する
Ⅵ 創部をケアする
1 局所治療の前に
1)糖尿病コントロール
2)虚血肢
3)透析
2 局所治療を理解する
1)基本的な局所治療
2)難治性潰瘍の局所治療
3)免荷
3 局所治療の実際
Ⅶ 切断部をケアする
1 義肢・義足総論
2 新規切断患者をケアする
1)切断端のケア
2)移動のためのリハビリの支援
3 既切断者をケアする
1)切断部のケア
2)義肢・義足をみる
3)歩き方をみる
Ⅷ 鑑別すべき潰瘍を見極める
1 褥瘡
1)病態生理
2)アセスメント,ケア
2 動脈性皮膚潰瘍
1)病態生理
2)アセスメント,ケア
3 静脈性皮膚潰瘍
1)病態生理
2)アセスメント,ケア
4 コレステロール結晶塞栓症
Ⅸ チーム医療をする
1 チーム医療総論
2 足外来の実際