内容紹介
医療施設を訪れる患者さんの約7割は「痛み」を主訴としているといわれています。外傷や胃潰瘍など明らかな内臓病変などによる痛みはその原因を取りさることで痛みは消失しますが,病因がはっきりとしない痛みや関節リウマチなどの慢性炎症といった病態,あるいは帯状疱疹後神経痛など病因がわかっていても治療が困難な痛みについては,どの診療科の医師も治療に難渋することが多いのも現実です。
このような現実をふまえ,各診療科において臨床上よく遭遇したり,治療に難渋する痛みを有する59の疾患,病態についてわかりやすく,読みやすい体裁をとって一冊の本にまとめました。各項目の筆者にはその分野でのエキスパートの方々をお願いし,まず典型的な症例をあげていただき,その解説を行うことによって,病態,診断,そして治療法がコンパクトにわかるような内容に統一されています。そして一項目ずつ見開きの2ページにまとめて参照しやすくし,日常の診療にすぐに役立つように工夫いたしました。
「痛い!」という訴えのなかにはさまざまな機序が含まれています。そのことをすべての臨床医が認識することにより,慢性の難治性の痛みへのより良い対処が可能となると考えます。この本がそのような目的に一歩でも近づく道しるべとなることを心より願っております。
(小川節郎「序文」より抜粋)
シリアルナンバーをお持ちの方はWEB版も閲覧できます。
http://cl.m-review.co.jp/
目次
第1章 顔面・頚部の痛み
(1)Tolosa-Hunt症候群
(2)三叉神経痛
(3)顎関節症
(4)舌痛症
(5)舌咽神経痛
(6)副鼻腔炎の痛み
第2章 腕・肩の痛み
(1)頚部神経根症
(2)頚部脊柱管狭窄症・頚髄症
(3)凍結肩(肩関節周囲炎)
(4)胸郭出口症候群
(5)野球肘
(6)テニス肘
(7)ばね指
(8)肩こり
(9)インピンジメント症候群
(10)腱板断裂
(11)掌蹠膿疱症に伴う骨関節病変(SAPHO症候群)
第3章 腰背部・下肢の痛み
(1)腰部脊柱管狭窄症
(2)腰椎椎間板ヘルニア
(3)骨粗鬆症・圧迫骨折
(4)仙腸関節障害
(5)failed back surgery syndrome
(6)変形性膝関節症
(7)変形性足関節症
(8)アキレス腱周囲炎
(9)外反母趾と強剛母趾
(10)泌尿器系臓器からの痛み
第4章 骨盤・会陰部の痛み
(1)女性の慢性会陰・骨盤痛
(2)変形性股関節症
(3)膀胱痛症候群(painful bladder syndrome)
(4)男性の慢性会陰・骨盤痛
第5章 血管性の痛み
(1)閉塞性動脈硬化症(ASO)
(2)慢性動脈閉塞症
(3)下肢静脈瘤による痛み
(4)急性動脈閉塞症
(5)下肢深部静脈血栓症
(6)糖尿病性潰瘍(非虚血)
(7)肢端紅痛症(erythromelalgia)
第6章 末梢性・中枢性神経障害性疼痛
(1)帯状疱疹後神経痛
(2)手根管症候群
(3)腕神経叢引き抜き損傷
(4)糖尿病性神経障害
(5)採血後の遷延痛
(6)脊髄損傷後の慢性疼痛
(7)脳梗塞・出血後の全身痛
(8)術後の遷延性創部痛(開胸術と乳房温存術)
第7章 機能性疼痛その他
(1)複合性局所疼痛症候群(CRPS)
(2)線維筋痛症
(3)外傷性頚部症候群
(4)中枢機能障害性疼痛
(5)脳脊髄液漏出症
第8章 小児の慢性痛
(1)小児に多い慢性疼痛
(2)小児の複合性局所疼痛症候群(CRPS)
(3)小児における精神・社会的問題による痛み
第9章 心理社会的問題による痛み
(1)心気症
(2)疼痛性障害
(3)スピリチュアルペイン
(4)うつ病
(5)労働災害や訴訟と痛み