内容紹介
肺高血圧症はかつて,原因不明で特効薬のない難病,生死を分ける病気と考えられてきました。しかし,ここ10年で肺高血圧症に関する研究と理解は大きく進歩し,有効な治療法が続々と開発されています。ひと昔前とは異なり,肺高血圧症患者さんの予後は大幅に改善し隔世の感があります。医療機関で適切な治療を受け,自宅で正しい自己管理を行うことで,肺高血圧症の進行は抑えられるのです。そればかりか,最近では肺高血圧症の治療を開始する前より良い状態まで戻る可能性も報告されています。肺高血圧症はもはや生死を分ける病気ではなく,長期管理を必要とする慢性疾患といえるでしょう。
本書は,肺高血圧症の診断を受けて悩んでおられる全国の患者さんに向けて,岡山医療センターで行われている治療・管理の実際をお伝えするために書かれました。肺高血圧症の長期管理においては,医師・看護師・薬剤師・理学療法士・栄養士などの多部門のスタッフが患者さんにかかわり,生命を守るためだけでなく,生活の質(QOL)を最大限に高めるために協働することが必要です。本書では,当センターで行われている実際のケアや指導,「肺高血圧で悩まない」ための提案を部門ごとに紹介しています。
適切な治療を受けた患者さんは,仕事や家事,軽い運動を行えるようになります。
実際,当センターを受診した多くの患者さんが自立した日常生活を送っておられます。本書では,そんな患者さんたちの貴重な体験談も紹介しました。
「もう肺高血圧なんかで悩まない」―本書のメッセージは,タイトルに端的に表れています。肺高血圧症の根治をめざした研究は日進月歩で進められており,今後も新たな治療法の登場が期待されています。全国の肺高血圧症患者さんに希望をもって治療に取り組んでいただくために,そして充実したよりよい日常生活を送っていただくために,本書がその一助となれば幸いです。
最後に,本書は当センター臨床研究部,循環器科,看護部,薬剤科,リハビリテーション科,栄養管理質の執筆協力のもと制作されました。また,本書全体の編集に尽力された循環器 宮地克維先生に心から感謝致します。
(松原広己「はじめに」)
目次
第1章 肺高血圧症とは
第2章 肺高血圧症で悩まないために
第1節 看護師からのメッセージ
第2節 薬剤師からのメッセージ
第3節 理学療法士からのメッセージ
第4節 栄養士からのメッセージ
第3章 肺高血圧症患者さんからのメッセージ
・転んでもいいから,前へ
・毎日を「ありがとう」の気持ちで