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定価 2,750円(本体2,500円+税) 版 型 B5判 頁 数 160頁 ISBN 978-4-7792-0823-2 発売日 2012年1月17日 編集 鈴木壱知
内容紹介
近年の肝臓病治療の進歩は目覚しく,B型肝炎に対する核酸アナログ製剤,C型肝炎に対するリバビリン併用インターフェロンや瀉血療法が行われるようになり,肝臓疾患の患者さんの予後は改善されるようになってきました。また,2008年には肝硬変に対する治療としてC型肝硬変に対して一部のインターフェロンの使用が承認され,肝硬変に対する治療も抗ウイルス治療が主体となり,予後は大きく改善されてきました。しかし,抗ウイルス治療が受けられない患者さんや抗ウイルス治療が無効な場合には,肝庇護剤などで経過をみているだけの場合も少なくありません。肝硬変において肝庇護剤などの薬物療法は重要ですが,栄養治療も予後改善や肝発癌防止の観点からきわめて重要な位置を占めるようになってきました。C型肝硬変では,肥満,糖代謝異常,鉄過剰などが肝発癌に影響することが明らかにされ,栄養治療の重要性が改めて認識されるようになってきましたが,適切な栄養治療が必ずしも行われてはいないのが現状です。また,肝硬変の治療において分岐鎖アミノ酸の重要性が認識されるようになってきましたが,分岐鎖アミノ酸が効果を発揮するためには適切な食事療法が不可欠であることは言うまでもありません。
本書は,肝臓病栄養治療の第一線で活躍していらっしゃる先生方に執筆をお願いしました。本書が肝臓病栄養治療に関わるすべての医療スタッフの参考になり,多くの患者さんに肝臓病栄養治療が行われることを希望します。
(鈴木壱知「序文」より要約)
目次
第1章 肝硬変の栄養療法
1.栄養療法の必要性/白石光一
1.エネルギー代謝異常
2.蛋白・アミノ酸代謝異常
3.糖代謝異常
4.鉄代謝異常
5.ミネラル代謝異常(特に亜鉛について)
2.栄養アセスメント(治療の適応と効果判定のために)/川村直弘
1.栄養診断のための評価項目
2.評価の方法
(1)静的栄養評価 (2)動的栄養評価
3.栄養スクリーニング
4.栄養アセスメントと栄養治療
3.栄養プランニング・モニタリング(食事療法の基本―ASPENガイドラインを中心に)/後藤陽子
1.食事療法のプランニング
(1)代償性肝硬変の食事療法 (2)非代償性肝硬変の食事療法 (3)夜食・分割食について
2.モニタリングと問題点
(1)エネルギー代謝のモニタリング (2)食事摂取量のモニタリング
第2章 栄養療法に使用される薬剤
1.分岐鎖アミノ酸の効果/鈴木壱知/香川景政/玉野正也
2.分岐鎖アミノ酸製剤の特徴と使い分け(アミノレバンEN,リーバクト顆粒,ヘパンED)
1.BCAA製剤の効果
(1)蛋白代謝改善作用 (2)エネルギー源 (3)骨格筋におけるアンモニア処理 (4)免疫機能
(5)肝再生の促進 (6)肝発癌抑制 (7)糖代謝改善作用 (8)QOL改善効果
2.BCAA製剤の特徴と使い分け
(1)肝性脳症の合併の有無による使い分け (2)食事摂取量による使い分け
(3)蛋白栄養障害が改善されない場合 (4)病態に応じた使い分け
第3章 栄養療法におけるチーム医療
1.チーム医療の役割(医師,管理栄養士,薬剤師,看護師の役割)/北原敦子
1.栄養サポートチーム(nutrition support team;NST)
2.NSTの役割
3.栄養管理手順のステップ
4.NSTカンファレンス・回診の流れ
5.NSTによる栄養管理のアウトカム
6.NSTにおける専任メンバーの役割
(1)医師の役割 (2)看護師の役割 (3)管理栄養士の役割 (4)薬剤師の役割 (5)臨床検査技師の役割
7.NSTの実際の活動(肝臓編)
(1)腹水を合併している場合の栄養アセスメント (2)肝硬変における腹水症例の栄養管理・治療のポイント
第4章 栄養療法の工夫と実際―全国の実例―
1.糖代謝/土屋昌子
1.糖の流れについて
2.肝硬変にともなう糖代謝異常の理由は
3.なぜ糖代謝異常があるといけないの?
4.肝硬変に合併する糖代謝異常の特徴とは
5.空腹時血糖値でわかりにくい「肝性糖尿病」を見つけるためには
6.肝硬変における糖代謝異常の治療とは
(1)なぜ単なるカロリー制限がいけないの? (2)分割食と糖代謝異常について
(3)どんな食品が良いの? (4)分岐鎖アミノ酸と糖代謝について
(5)食事療法だけでは,糖代謝が改善しないときは?
(6)運動療法は良い?悪い?
7.栄養療法の実際
2.アンモニア代謝/白木 亮/森脇久隆
1.分類
2.肝性脳症発生のメカニズム
3.診断
4.治療
(1)誘因の除去 (2)食事療法 (3)薬物療法
3.腎障害時の栄養療法/遠藤龍人/鈴木一幸
1.肝疾患に合併する腎疾患
2.CKDにおける代謝異常と栄養食事療法の意義
3.栄養食事療法の基本方針
4.栄養アセスメント
5.栄養管理計画
(1)蛋白質摂取量の考え方 (2)エネルギー量の考え方 (3)食塩制限の考え方
6.CKD合併肝硬変における蛋白制限食+BCAA療法
7.透析例におけるBCAA併用療法の意義
4.分割食/LES(就寝前夜食)/菅原美和
1.分割食とは
2.LESとは
3.分割食・LESの必要性
4.分割食・LESの実際
5.分割食の応用
6.耐糖能異常と分割食
7.分岐鎖アミノ酸(BCAA)とLES
8.栄養指導を行う際に
5.鉄制限食/岩田加壽子
1.肝硬変患者さんに対しての鉄制限食
2.鉄制限食の実際
(1)鉄制限を始める前に規則正しい食習慣
(2)鉄制限食:摂取目標量は1日鉄量6mg以下
(3)ヘム鉄・非ヘム鉄
(4)健康食品にも鉄分が含まれています(健康食品の鉄含有量)
(5)肝不全用経口栄養剤の影響
6.チーム医療の実際 1)肝臓病教室/俵万里子
1.肝臓病教室の目的
2.肝臓病教室の歴史
3.肝臓病教室運営方法
(1)運営スタッフ (2)教室開催までの流れ (3)肝臓病教室の実際
6.チーム医療の実際 2)NSTから生まれた新たな栄養療法/川口 巧/谷口英太郎/伊藤 実/居石哲治/大津山樹理/大塚百香/田中粹子/小野 緑/佐田通夫
1.肝硬変患者さんの栄養状態と体組成評価
2.就寝前補食の適応
3.加温による肝不全用経腸栄養剤の摂取量向上
4.検査前・治療前の補食
Topics ガイドライン解説
1.C型慢性肝炎の治療ガイドライン/中西裕之
2.B型慢性肝炎の治療ガイドライン
3.ウイルス性肝硬変に対する包括的治療ガイドライン
1.厚生労働省研究班によるC型慢性肝炎の治療ガイドライン
(1)C型慢性肝炎治療の変遷 (2)標準治療の成績と治療効果規定因子
(3)治療中の抗ウイルス効果と治療成績 (4)LVR症例における72週投与の有用性
(5)再燃に関与する因子の検討と72週延長投与の推奨の拡大
(6)近年のガイドラインの改正点
(7)血清ALT正常C型肝炎例への抗ウイルス治療ガイドライン
2.厚生労働省研究班によるB型慢性肝炎の治療ガイドライン
(1)B型慢性肝炎治療の変遷 (2)抗ウイルス療法の適応
(3)ラミブジン投与中の患者さんにおけるエンテカビルへの切り替え
(4)抗ウイルス療法の中止
3.厚生労働省研究班によるウイルス性肝硬変に対する包括的治療ガイドライン
ショートコラム:瀉血療法/中西裕之