内容紹介
本書の初版が出版されたのは25年前である。四半世紀の時が一瞬に思われる,時の経つのは実に速い。世界で最初のCCUは1962年米国の2病院に開設され,その5年後に本邦でも開設された。今では伝説の如く語られるようになったが,心筋梗塞の急性期死亡は40%を超え,働き盛りの人たちが一瞬に絶命する人類にとって最も恐れられ,悲劇をもたらす疾病であった。
未だ若く,野心に燃えてこの領域に挑んだ私たちは正に寝食を忘れ,CCUを唯一の砦として無我夢中で難敵と対決した。その間,医学へは人類が創り得たすべてのイノベーションが導入され,画像診断や治療手段などの技術的進歩,医療材料や生化学的解析手段の目覚ましい改良などにより,死亡率は激減を示すことになった。今では心筋梗塞の急性期死亡率は数パーセントとなり,ほとんどの患者さんたちが救命され,元気に社会復帰ができるようになった。これらの革命的出来事の背景には,常にCCUが存在したことは言うまでもない。
現在では,CCUは心筋梗塞のみにとどまらず,心臓血管由来のすべての重症病態への対応施設として循環器診療に不可欠の存在となっている。今回第七版の改訂にあたってはその点を十分に配慮して全面的な手直しを行った。担当された諸先生方に深く感謝申し上げる。
(児玉和久「改訂七版序文」より)
目次
第1章 総論
○1.CCUの意義と歴史/平山篤志
○2.CCUのデザイン―スタッフと役割―/平山篤志
1.CCUの構成
2.CCUの設備
3.CCU患者の受け入れ体制
○3.CCUの入院の対応/平山篤志
1.適応基準
2.急性心筋梗塞を診断する上で紛らわしい疾患
○4.急性冠症候群の概念/平山篤志
○5.不安定狭心症の分類(Braunwaldの分類)/平山篤志
○6.急性心筋梗塞の新しい概念/平山篤志
○7.動脈硬化の進展/平山篤志
○8.心臓の解剖学/奥山裕司
1.心房・心室・大血管・冠動脈の簡単な位置関係
2.梗塞部位と異常Q波出現誘導・左室造影所見の対比
3.冠循環
○9.心臓の生理学/三嶋正芳
1.心周期
2.心臓の圧容積関係
3.スターリングの心臓の法則
4.心臓のポンプ機能とその指標
5.心筋エネルギーの需給
6.健常時と虚血時の心筋代謝
7.心筋虚血の指標としての乳酸産生
第2章 診断および治療
○1.急性冠症候群/水野裕八
1.定義
2.分類
3.診断
4.予後
○2.急性冠症候群が疑われる場合の診断と治療のプロトコール/上田恭敬
1.リスク分類
2.初期治療
3.一般的管理項目
4.急性冠症候群の経カテーテル検査による診断と治療(PCI)
5.緊急カテーテル検査の適応と施行上の問題点(Informed Consentを含めて)
○3.急性心筋梗塞の再灌流療法/上田恭敬
1.再灌流療法の原理と有用性
2.再灌流療法の適応
3.再灌流療法の禁忌
4.IVTの実際
5.PCIの実際
6.IVTとPCIの効果の比較
○4.酸素療法の適応,動脈血ガス,人工呼吸の適応/小牟田清
1.動脈血ガスの意義
2.AMIの呼吸管理
○5.検査所見の経時的変化/大谷朋仁
1.ECG
2.心筋特異的蛋白
○6.RIを用いた心筋イメージング/長谷川新治
1.Thallium-201(201TI)心筋シンチグラム
2.Technetium-99m tetrofosmin(99mTc-TF:マイオヴュー),99mTc-sestamibi(MIBI:カルディオライト)心筋血流シンチグラム
3.99mTc-pyrophosphate(99mTc-PYP:ピロ燐酸)心筋シンチグラム
4.123I-β-iodophenyl-3-(R,S)-methylpentadecanoic acid(BMIPP:カルディオダイン)心筋シンチグラム
5.心プールシンチ
6.123I-meta-iodobenzylguanidine(MIBG)心筋交感神経シンチグラム
○7.心エコー,ドプラー/竹田泰治
1.心エコー法
2.心ドプラー法
3.合併症の診断
○8.CT,MRI/小松 誠
1.MDCTによる冠動脈評価
2.MRIによる心機能評価
○9.不整脈とその治療/奥山裕司
1.不整脈の種類と頻度
2.病態生理
3.主要な不整脈の特徴とその治療
○10.永久的ペースメーカの適応/奥山裕司
1.適応疾患
2.適応基準
3.ペースメーカの種類と機能選択
○11.除細動とその適応/奥山裕司
1.直流通電治療とは
2.適応
3.禁忌など
4.方法
5.合併症
6.植え込み型除細動器(implantable cardioverter-defibrillator:ICD)
7.恒久的ペースメーカ患者の直流通電
○12.心不全の重症度分類とその治療法/柏瀬一路
1.Forrester分類と肺動脈カテーテル
2.Forrester分類と心不全治療
3.Nohria/Stevenson分類
4.Clinical Scenario
○13.心原性ショックとその対策/大谷朋仁
1.原因
2.診断基準
3.治療
4.不整脈管理
○14.補助循環装置/溝手 勇
1.補助循環療法の目的
2.大動脈内バルーンパンピング
3.経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support:PCPS)
○15.心破裂,心室中隔穿孔,乳頭筋断裂の診断とその治療/大竹重彰
1.自由壁破裂
2.心室中隔穿孔(Ventricular Septal Rupture:VSP)
3.乳頭筋断裂
○16.急性心筋梗塞の薬物治療(急性期から亜急性期)/清水政彦
1.アスピリン
2.β遮断薬
3.硝酸薬
4.ACE阻害薬
5.スタチン
○17.心筋梗塞サイズ縮小化の治療/坂田泰彦
1.再灌流傷害の原因
2.再灌流傷害の予防と治療
○18.心臓リハビリテーション/山元博義
1.心筋梗塞の病期ごとのリハビリの目的
2.心筋梗塞の心臓リハビリテーションの実際
3.運動処方
○19.呼気ガス分析を伴う運動負荷試験の臨床応用/山元博義
1.Peak VO2
2.Anaerobic Threshold:AT
○20.解離性大動脈瘤/大竹重彰
1.病型分類
2.診断
3.治療
○21.肺血栓塞栓症/大谷朋仁
1.診断
2.治療