内容紹介
近年,乳癌の診療は診断から治療に至るまでさまざまな分野において新しい概念,手法が導入され長足の進歩を遂げている。また,疾患に関する基礎的な理解も著しく進み,奥行きのあるひとつの学問体系となっている。したがって,その診療においては幅広い知識や技術が必要であり,集学的な診療アプローチや多種のチームで取り組む医療システムに習熟しておくことが望ましい。
本著では,このような観点から,乳癌診療に関する主要なテーマをなるべく幅広くとりあげ,知っておくべき知識や考え方がコンパクトに含まれるように配慮した。治療に関しては基本的な戦略を軸にした概説を心掛けた。劇的に変化する癌診療の中でも,乳癌診療の進歩・進展速度は速い。常にupdateが必要であるが,他方,中心を流れる幹の部分についてはしっかりした理解と将来の方向性に関する洞察が求められる。
『乳癌レビュー2009』は幸いにしてご好評をいただいたので,今回改訂の運びとなった。最近の知見を取り入れ,新規項目を設けて,集約と個別化が進む診療の現状の把握,新しい考え方や技術に関する情報が多少とも得られるように配慮した。役立つことがあれば,今後も継続的にアップデートしてゆく予定である。
(序文より抜粋)
目次
基礎編
◎疫学/戸井雅和/高田正泰
◎乳癌の生物学と治療標的
・乳癌幹細胞/吉川清次
・ホルモン受容体/佐治重衡
・EMT―基礎的観点から/橋本あり/杉野弘和/橋本 茂/佐邊壽孝
・EMT―上皮間充織転換/上野貴之
・HER2と抗HER2標的治療/山城大泰
・腫瘍血管新生と抗血管新生療法/戸井雅和
・乳癌とDNA修復/吉川清次
・PARP阻害剤/杉江知治
・乳癌の分類/上野貴之
◎病理・病態/三上芳喜/山城大泰
診断編
・マンモグラフィ/金尾昌太郎
・MRI/金尾昌太郎
・乳房超音波/芳林浩史
治療編
・ゲノム薬理学/石黒 洋
・バイオマーカー―化学療法/上野貴之
◎局所療法
・手術療法/稲本 俊
・乳房再建/冨士森英之/木村得尚/身原弘哉/鈴木茂彦
・センチネルリンパ節生検/鍛 利幸
・放射線療法/山内智香子/楢林正流/平岡真寛
◎薬物療法
・ホルモン療法/高田正泰/戸井雅和
・化学療法/高田正泰/石黒 洋/戸井雅和
・新しい化学療法剤/増田慎三
・免疫療法/杉江知治
・骨転移とビスホスホン酸/杉江知治
・抗RANKL療法/山内清明/多久和晴子
・支持療法①―好中球減少症と感染症の管理/石黒 洋
・支持療法②―悪心・嘔吐/石黒 洋
◎治療戦略
・ガイドライン/阿部 元
・インフォームド・コンセント/竹内 恵
・チーム医療,集学的治療/山城大泰
◎緩和ケア/堀 泰祐
◎外来フォローアップ/杉江知治
◎乳癌の予防/杉江知治
◎遺伝性乳癌と遺伝カウンセリング・BRCA1/2遺伝学的検査/小杉眞司
◎医療経済/近藤正英
◎がん登録/山城大泰
最近の話題
1.病理診断の難しさ/三上芳喜
2.マンモグラフィと超音波検査の検診/田中文恵
3.組織生検/芳林浩史
4.食生活と乳癌リスク/辻和香子