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定価 3,080円(本体2,800円+税) 版 型 A4判 頁 数 104頁 ISBN 978-4-7792-0639-9 発売日 2010年11月1日 監修 吉野孝之 山﨑直也 編集 チームベクティビックス 編集幹事 川本泰之
内容紹介
パニツムマブ(ベクティビックス(R))は,世界初の完全ヒト型抗EGFRモノクローナル抗体薬として,「KRAS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」を対象に,すべての治療ラインで化学療法との併用投与又は単剤投与で,2010年4月に製造承認を受け,6月に販売された。パニツムマブの治療効果予測因子であるKRAS遺伝子変異検査も同時に臨床導入された。今後益々,大腸癌の薬物療法はバイオマーカーに基づいた個別化治療へ移行していくものと考えられる。
国立がん研究センター東病院では,多職種チーム(医師,看護師,薬剤師)からなる「チームベクティビックス」を編成し,院内でのパニツムマブ適正使用に当たっている。以前に編成した「チームアービタックス」の経験を活かし,(1)支持療法のさらなる充実: 皮疹や爪囲炎に対する処方箋セットの作成や皮膚科医との連携強化,低マグネシウム血症の管理体制,(2)円滑な外来管理を目的としたプログラム: 急性輸注反応発現時の対応手順の再確認,薬剤師・看護師による化学療法ホットライン導入,薬剤師外来などの薬剤指導体制の強化,看護師・薬剤師による皮膚毒性の評価を医師へフィードバックする体制の確立,(3)コメディカル中心の臨床試験の立案,などの院内整備を行った。
本書はまさに国立がん研究センター東病院の実臨床そのものであり,パニツムマブの適正使用の普及を目的として本書を発刊するに至った。皆様の診療の一助になれば幸いである。
(吉野孝之「序」より)
抗EGFR抗体薬全般で報告されているように正常皮膚および皮膚付属器におけるEGFRをも標的としてしまうことによって起こる皮膚症状の発現は,原病の治療上避けて通れない問題である。一方,この皮膚症状の発現と抗EGFR抗体の治療効果が相関することが示唆されているので,治療にあたっては皮膚症状を管理しながら大腸癌の治療を適切に継続することが必要となる。
皮膚障害はパニツムマブ投与初期から高頻度に出現する。このことは患者さんにとって皮膚の機能障害はもちろん,強い精神的苦痛につながるため,大腸癌の治療早期から適切なマネジメントを行わなければならないが,より早い時期からの日常生活上のスキンケア,フットケアの指導に加えて,予防的な薬剤の投与を積極的に行うことがさらに効果的であると言われ始めている。皮膚症状のマネジメントを徹底するためには主治医はもちろん,皮膚科医,そして看護師,薬剤師を含めた院内,ときには院外にも協力を求める多職種のチーム医療がうまく機能することがとても大切で,治療を成功させるための重要なポイントであると考える。
本書では,パニツムマブによって起こりやすい皮膚障害について解説し,その対処法について記載した。本書が癌治療の現場で抗腫瘍効果を最大限に引き出すための一助となればこれほどうれしいことはない。
(山崎直也「序」より)
目次
第1章 パニツムマブの基礎データ
1.上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)の構造と機能
2.パニツムマブの作用機序
3.EGFRシグナル伝達系とKRAS遺伝子変異の関係
4.パニツムマブの開発経緯
5.パニツムマブの特性
6.KRAS 遺伝子変異検査の実際
第2章 パニツムマブの臨床成績
1.一次治療における有効性―PRIME(プライム)試験
2.二次治療における有効性―20050181試験
3.三次治療における有効性―20020408試験
4.国内第II相試験
5.皮膚症状に対する予防療法の有効性―STEPP試験
6.パニツムマブに関する進行中の臨床試験
第3章 パニツムマブの副作用対策
1.セツキシマブ投与から学んだこと
2.パニツムマブの皮疹対策
3.パニツムマブのinfusion reaction対策
4.パニツムマブのその他の副作用対策
Q&A
1.実際の治療ラインは?
2.KRAS に続くバイオマーカー?
3.パニツムマブのinfusion reaction,30分投与の実際?
4.パニツムマブとセツキシマブの使い分け?
5.パニツムマブとベバシズマブの併用療法は可能か?
資料
1.レジメン紹介
2.同意書
3.パニツムマブ投与説明書
4.スキンケア対策マニュアル(看護師用)
5.スキンケア対策マニュアル(患者用)
6.パニツムマブの皮膚症状に使用する薬剤説明(薬剤師用)
7.市販の保湿剤紹介
8.実際の投与方法(看護師用投与マニュアル)付録
PDF・WORDデータとしても収録。
ベクティビックス(R)情報サイト
KRAS 遺伝子変異検査外注検査会社一覧
パニツムマブ薬価表